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三番隊の日常①

すーっと扉が開いて、現れたのはこの部屋の主

少し強めの風にでも吹かれたら、さらわれてしまいそうなほどよろよろとしながら姿を現したその男は
部屋へ足を踏み入れるとすぐ、弱々しく言った。

「あー・・イヅル、朝から下痢したんやけど・・ めっちゃテンション下がるわぁ・・」

この発言を聞き、これが本当に三番隊の隊長でいいのかと疑問を抱きながら吉良は答えた。

「そんなこといちいち報告しないで下さいよ。こっちのテンションが下がります。」

心配はおろか構ってもくれそうもない部下に、男は泣き崩し作戦に出た。

「なんやイヅル君、冷たない? 悲しゅうて涙出るわ」

「そんなことより遅刻ですけど」

吉良のさらに冷たい一言に男は打ちひしがれた。

「信じられへんっ!イヅルは僕がどれだけの死闘を朝から繰り広げたか知らんから
そない冷たいことが言えるんやっ!」

下腹部を両手で押さえながらよたよたと十分な時間を掛けて執務机へ向かう上司を見ながら
吉良は小さく吐息を付いた。

「その死闘も虚相手なら労いの一つも申し上げられますが・・・お腹下してって・・まぁお察しはします・・」

その言葉に男はハッとしたように目を少し開くと
もう少しで辿り着くはずだった執務机を前にして床に崩れ落ちた。

伸ばした指先が机の端を掠めたが、届きそうだったそれは一寸遠く、敢え無く宙をかいただけだった。

「イヅルが優しくない・・うぅ・・ もう立てへん・・」

「・・・・。」


なんて世話の焼ける・・


吉良は心の中で呟いた。


しかしこれでも三番隊を統べる男、市丸ギン

倒れた先でチラリ上目遣いでこちらを窺ってくる市丸の姿に
吉良はようやく重い腰を上げた。

「・・ハイ、ハイ・・」

自力では立つ気のないらしい市丸のそばに寄り、よっこらせと身体を起こしてその腕を自分の肩へと回した。
それでも尚、他人任せな市丸をずるずると執務机まで引きずりやっとの思いで椅子に座らせると
ふ~っと長い溜息を付いた。

「これで?」

満足ですか?と嫌味を含んだ口調で吉良が問うと
執務机に突っ伏したままの市丸から消え入りそうな声が聞こえた。

「おおきに・・・」

吉良はその言葉に苦笑した。

三番隊を統べる男、市丸ギンは
やはり愛すべき隊長なのだ。

「他に何かして欲しいことありますか?」

なんだかとても愛しい気持ちになった吉良は
自然と優しい言葉を掛けていた。

しかしその優しさに付け上がるのが市丸ギン。

「日番谷はんに会いに行ってもええ・・?」

わずかな期待を悟られまいと、すがるような表情を見せる市丸を見下ろしながら
ほん少しでも仏心を見せた自分が悲しくなった吉良だった。


三番隊の日常① 続?



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