黒子っちマジ黒子っち！

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とある日の十番隊　【前回続き】



「ひ、ひ、日番谷はんっ！！！　キミ何言うとるか分かってはるの！？」

先ほどから傍らで一人百面相をしていた市丸が、ついに極まった声を上げると
日番谷はこの時はじめてその存在を認識したかのように視線を移した。

そして意味ありげにほくそ笑むと、乱菊に言った。

「あぁでもあそこに一人、普通じゃなさそうなヤツがいたな」

その言葉に乱菊もちらりとソファの方へ視線を運んだ。
挙動不審なほど落ち着かない市丸の様子に乱菊は内心可笑しくて仕方なかった。

「市丸は不意打ちとかそういう卑怯なの好きそうだしな、後ろから攻められるのも別にいいんじゃねぇか？」

悪気はゼロなのだろうが、恋人に卑怯呼ばわりされるのってどうなの、と
乱菊は少なからず市丸を哀れに思った。

しかし冷静な乱菊とは対照的に、ひとり別の世界からこちらの会話を聞いている市丸にとって
日番谷の発言は不本意を通り越して、全身に稲妻が走るほどの威力を持ったものだった。

「ひっ、ひっ、ひーーー（叫び）つがやはんッ！？　な、な、なに言うてはるのっ！？
ご、誤解や！！僕にはそっちの趣味はないで！？むしろキミ、いつからそう思ってたんッ！？」

市丸らしからぬ慌て振りに、そんなに動揺してたらかえって怪しい、と
乱菊は相手として考えられうる人物を想像し笑いを必死に堪えた。

「ん？そうなのか？でもお前、後ろから攻めるのは絶対好きだろ？相手の不意を衝く奇襲的なやつ
だから後ろから攻められるのも得意なのかと思っただけだ。」

「ぎゃーーーっ！キミ、人前でなんてこと言いよるんやッ！！」

ま、まさかここまで大っぴらに自分の嗜好を公言されるとは。
市丸はくらりとした。

日番谷はん、僕が後ろから攻めるのが好きだと思うてたん・・？
なんやリアルに恥ずかしいわ・・


確かに後ろからは多いかもしれない。
ただだからと言って後ろから攻めるのが好きな訳ではない、断じてない。
それにはちゃんと理由があって・・
いや、でも正直嫌いじゃないし、というかむしろやっぱり好きだけれど・・


市丸はばたばたと両手を動かし、声にならない言い訳を何度も心の中で繰り返した。

「なんだよ、別にそんな慌てるようなことじゃないだろ」

「大胆過ぎて慌てるわッ！！」

「大胆ってなんだよ、思ったこと言っただけだろ？」

ブツブツと文句を言い出した日番谷に
このままでは過呼吸で倒れてしまいそうな市丸。

しかしもう一つ、自分の名誉のためにも解いておかなければならない誤解がある。

「しかも後ろから攻めるのが好きやと後ろから攻められるのも好きっちゅう安易な定義はなんやッ！？
キミ、それ全然ちゃうから！！攻めと受けはまったく別もんやからっ！
あぁ、可愛えぇ顔してなんて恐ろしいこと言いよる・・」

日番谷一筋の自分が受けもＯＫなどと、どうしたらそんな突拍子もない思考に走れるのか
市丸はぜぇぜぇと最後の力を振り絞って目の前の恋人に抗議した。

突拍子もない思考に突っ走っているのはどう考えても市丸自身なのだが
そのあまりの形相に日番谷は反論の言葉を失い、意味わかんねぇ、とただ呟いた。



噛み合わない二人の会話に成り行きを見守っていた乱菊は、ここでようやく助け舟を出すことにした。

「で、結局あんたは不意を狙って後ろから攻めるのが好きなわけ、ギン？」

いや、正確にはこの状況をさらに楽しむための泥の舟

「なんや乱菊まで不意打ち、不意打ちって失礼やな、流れでそうなるんや、そないゆうほど不意打ち的な状況やないやろっ
それに好きとかの前に日番谷はんの身体の負担考えたら必然的に後ろからが多くなってまうだけやっ」

これにはさすがの乱菊も目をパチパチと瞬かせた。
しかしその驚きも次第に一興へと変わる。

「・・・ふ～ん、ていうか、今のあんたの発言が一番生々しくて恥ずかしいんだけど、いいの？そんなことまで赤裸々に。」

乱菊がこれ以上の楽しみはないという程の、いや～な笑顔で市丸を見据えると、
瞬間、全身から冷や汗が噴出し、身体中を流れ落ちた。







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ひとやすみ。（まだ続けるのか）